2010年7月アーカイブ

相続が発生したら・・・

 

民法では「相続は、死亡によって開始する」と定められています。

相続に関する手続きは、被相続人の死亡によってスタートします。

その手続きは次の二つに分けて考えます。 

1.遺産をどのように分けるか

2.税金をどうするか

これらの手続きには、期限が決まっているものも多いので

スケジュールの管理が重要になってきます。

事実上の相続放棄

裁判所で正式な相続放棄の手続きをせず、放棄する者を含めた相続人全員で遺産分割協議書を作成したり、生前贈与を受けているため相続分がないと陳述する書面を作成する方法があります。

 

Hさんの場合、ご兄弟でのトラブルの可能性が低いとはいえ、時間の経過によって事態が変わることもあるので、念のためHさんとともに公証役場へ行き、相続を受けない旨の「宣誓書」を作成したうえで、跡取りの弟さんに相続させる旨の遺産分割協議書を作成しました。

事例3の続き

Hさんに遺言書を確認していただいたところ

跡取りの弟に相続させようと兄弟で話し合っていた不動産は

「Hに相続させる」となっていました。

 

さて困った・・・Hさんはすでに生活の拠点が東京にあり

田舎の地域の付き合いも考えれば弟が継ぐべき・・・

だけど遺言書の内容を覆すとなると大変そう・・・

 

相続の放棄

専門家の立場からすれば遺言は最も尊重しなければならないもので

安易にその意に反することは被相続人の人権にも関わることです。

しかし、相続の指定を受けたHさん自身が、受理しない意思を明確にしており

かつ、そのことが今後トラブルになる可能性が限りなくゼロに近い状況で、

お母さんも「第一子であるHさんに処理を任せる」という趣旨で遺言を

残したと考えられたことから、例外的に相続の放棄もできると判断できました。

 

相続の放棄は、原則として被相続人が亡くなった日から3カ月以内に

裁判所に申述しなければなりません。

ただし、実務上は3カ月が過ぎてしまったり、手続きが面倒という理由で

別の方法が使われることがあります。

(次回につづく)

 

Hさんは60代の女性。若い時に離婚され、娘さんが一人いるだけです。

Hさんのお母さんが亡くなり、田舎に帰って兄弟と話し合いました。

 

事実上、田舎で跡をとっている弟に土地、家屋、畑など不動産の全てを

相続させることになりましたが、・・・ふとHさんが気付きました。

「確かお母さんは遺言書を残していなかったかしら・・・」

何年も前にそんなことを言われたような・・・

 

公正証書遺言の確認

公正証書遺言の場合、遺言を作成した公証役場に相続人の誰かが出向き

・被相続人の戸籍謄本(死亡日の入ったもの)

・請求者(=相続人)の、戸籍謄本、印鑑証明書、実印

を持参すれば、遺言書をもらうことができます。

 

なお、委任状・代理人の身分証・認印があれば、代理人でもOKですが

実印を預けなくてはなりませんので、自分で行くのが無難です。

 

また、遺言を作成したところ以外の公証役場でも、コンピュータ化されていれば

遺言書の存在については確認できますが、その内容までは確認できません。

(次回へつづく)

事例2の続き

遺言もない状況で、相続人以外に直接相続させることはできませんので

まず相続人であるSさんに相続させたうえで、Kさんに贈与または売却するという

2段階の手続きが必要です。

 

でも、遺産の額によっては、Sさんへの相続で相続税がかかり

Kさんへの贈与または売却で贈与税または所得税がかかってしまいます。

また、登記を2回行うので、登録免許税も余分にかかります。

 

Kさんは、結局Sさんへの相続だけをすることで納得されましたが、

家族の形が多様になった今の時代では、遺言書は家族を守る大切な道具

なりました。少しでも気になる家族がいれば、必ず一度は遺言を勉強してみて下さい。

Kさんは子供を連れてSさんと再婚し、Sさんのお母さんとも同居

していました。Sさんのお母さんが亡くなり、KさんとSさんはお母さんの

遺産について話し合いました。

その結果、遺産である土地の一部をKさんの子供のために、Kさんの名義に

することになりました。

ご相談に来られたKさんは

「私も身内なんだから相続する方法はないの?」

と質問されました。

 

遺言がある場合などは別として、相続権を有するのは民法で決められた人たちだけです。被相続人の子供の配偶者は相続人にはなれません

もし、どうしても・・という場合には、別の方法を考えなくてはなりませんが、経済効率が悪い方法なのであまりおススメもできないのです・・・・。

(次回へつづく)

「特別縁故者の財産分与」の手続には時間もかかる

 

これまで見てきたように、この手続を行っても確実に財産分与を受けられるのか

終わってみなければわかりません。

また、「相続財産管理人選任の申立」、「債権者・受遺者に対する債権申出の公告」

「相続人捜索の公告」を経てから「特別縁故者に対する財産分与の申立」を行うため

1年以上かかってしまいます。

 

さらに、弁護士さんに頼まずに申し立てをしても、相続財産管理人は弁護士さんが

選任されることがほとんどで、その費用を「予納金」として裁判所に納めなければなりません。

 

このように、時間と費用がかかる上に、確実でもないこの方法は

あまりおススメできません。

ご相談のあったYさんの場合、とりあえず「相続財産管理人選任の申立」の手続を開始し

決定した「予納金」の額を見て再検討するのが無難だと思われます。

 

いずれにしても、独身の方が遺言を書かずに亡くなると

思わぬ法律のカベにぶつかります。周りの方が振り回されるだけでなく、

なんとなく描いていた自分の遺志がひとつも実現しないことに

なりますので、必ず一度は検討するべきです。

どこまで財産分与が認められるか

 

特別縁故者の財産分与に限らず、裁判所の判断で決定されるものには

明確な基準がありません

より公正・公平な判断をするため、裁判官の独立が憲法でも

保障されているからです。私たちから見ればブラックボックスにも見えますが

法秩序を守る基本でもありますので、やむを得ないと思います。

 

過去の判例は参考にはできますが、ある事例と全く同じ人間関係、全く同じ

看護の状況、全く同じ遺産額、全く同じ・・・などという判例はありませんので

あまりアテにはできません。弁護士さんに相談すれば、分与される確率は

高まると思いますが、保証までしてくれるわけでもありません。

 

ただ、傾向として遺産全額を分与されることはほとんどない

考えるべきです。原則が国庫であり、特別に分けてあげるというのが民法の

趣旨になっているためです。時代に合っていないと思いますが・・・

(さらにつづく)

事例1の続き

相続人のいない方が遺言書も残さずに亡くなると

その遺産は原則として国のものになります。

ただし、裁判所に申し立てをすればその一部が特別縁故者に財産分与

されることがあります。

 

特別縁故者とは・・・

・被相続人と生計を同じくしていた者

・被相続人の療養看護に努めた者

・その他被相続人と特別に縁故があった者

          ・・・とされています。

最終的には裁判所の判断ですが、かなり広く解釈する傾向にあります。

したがって、Yさんの場合も必要な証拠類を提出すれば特別縁故者として

認められる可能性は高いといえます。

 

問題はどこまで財産分与を認められるかという問題です。

(さらに次回へ)

 

相続人も遺言もないまま亡くなると・・・

Aさんは高齢で、ほとんどここ数年、病院で暮らしてきました。

親はもちろん兄弟も若くして戦死され、生涯独身のため兄弟も含めて

誰にも子供はいませんでした。

YさんはAさんのいとこにあたり、一人で暮らすAさんを気遣い、病院の手続や

身の回りの世話などをしてきました。

 

約2年の療養後Aさんは他界されました。Yさんは、生前のAさんから口頭で

言われていた通りAさんの定期預金を使って弔いをすることにしました。

ところが、銀行は払い戻しに応じてくれません。親戚であることやこれまでの事情を

説明してもダメでした。Yさんにも、そんなに余裕があるわけでもありません。

しかし、無縁になるお墓ではかわいそう・・・。そんな思いでご相談に来られました。

 

(つづきは次回)

公正証書遺言のポイント

 

証人2人以上と一緒に公証役場で作成。

 (場合によっては、公証人が自宅や病院にも来てくれる。

  ただし別途費用がかかります。)

・公証人が、遺言者の話した内容を書いて、遺言者と証人に確認。

・公証人が公正証書として署名・押印。

 

なお、以下の方は証人にはなれません

1 未成年者

2 相続人になるべき方、遺言によってその財産を受けることになる方

3 2の配偶者や直系血族

4 公証人の身内や使用人

 

・・・となると、証人を探すのに苦労される場合もありますが、

専門家や公証人に依頼すれば、用意してくれます。

ただし、これにも費用はかかります。一人探すのに1万円から2万円くらいです。

自筆証書遺言の書き方のポイント

 

・全て自分で書く。代筆やワープロは無効

・日付も自分で書く。平成22年7月」のように日が入っていないものや

 「平成22年7月吉日」と書いた場合には無効

・氏名も自分で書く。ペンネームなどでも遺言者が特定できれば有効

・押印は、実印がよいが、認印・拇印でも有効。

・訂正などは、そこに押印のうえ署名。

・遺言書の封印は自由だが、封印すれば裁判所での開封が義務付けられるので

 偽造や変造の危険が減る。

さて、それぞれ長所と短所がある「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」は

どのように使い分ければよいのでしょうか?

 

まず、遺言者が亡くなった後、遺族の間でもめごとが起こる可能性が

ほとんどないのであれば、自筆証書遺言でもよいと思いますが

少しでも不安があれば、公正証書遺言のほうが無難です。

 

また、遺言者がまだお若くて財産額や相続人が変わる可能性がある場合は

定期的に遺言を見直すことが必要です。

自筆証書遺言にすれば比較的費用を抑えたまま遺言を見直すことができます。

遺言として主に使われるのが

「自筆証書遺言」「公正証書遺言」です。

 

「自筆証書遺言」とは・・・

その全文、日付、名前を自分で書き、押印した遺言書です。

費用がかからないという長所がありますが、変造や破棄の危険があり

遺言者の死亡後、裁判所での「検認」に手間と時間がかかります。

また、文字が書けないとこの方法は使えません。

 

「公正証書遺言」とは・・・

遺言の趣旨を公証人に伝え、公正証書として作成した遺言書です。

原本が公証役場に保管されるため、紛失や変造の危険がなく

死亡後の「検認」も不要なので、すぐに遺言を実行できます。

ただし、公正証書の作成費用など余分に費用がかかります。

 

(次回は・・・どっちを選べばいいの?)

Q. どんな人が遺言を書くべきなのでしょうか?

 

A. 以下のような方は、とくに遺言を書かれることをおススメします。

   相続で生じる問題は、決してお金持ちの方だけのことではありません

   私たちから見て、「将来必ずトラブルになる・・・」と思われるケース

  ほど遺言を残していません

   1  財産が住んでいる家や土地だけ

   2  個人事業主や農業

   3  子供がいない

   4  相続人がいない

   5  孫にも相続させたい

   6  息子の嫁にも相続させたい

   7  認知したい子がいる

   8  内縁のパートナーがいる

   9  障がいを持つ子供がいる

   10 再婚している

                     ・・・などなど。

遺言とは、愛する人のため、自分の最後の意思を表明する

法律上の文書です。

 

遺言では、遺産の分け方をはじめ、葬儀の方法や家族への思いなども

書くことができます。

 

遺産の分け方については、遺留分の問題がありますが、原則として

遺言には強い拘束力がありますので、実務上も遺言の内容が

実現される可能性はとても高いといえます。

 

また、相続のもめごとは遺産額の大小に関わらず起こりますし、

わずかなものであっても、預金の引き出しや不動産の登記でトラブル

発生します。どのようなお立場の方であっても、必ず一度は検討すべきもの

なのです。

Q. 相続の開始時に被相続人の奥さんが妊娠していたら?

 

A. その子が生まれれば、相続権を与えられます。残念ながら死産であった場合は

  初めからいなかったものとされます。

  民法で胎児にも相続権が認められていることから、遺産分割は原則として

  その胎児の出生後となります。

 

  また、相続税の基礎控除の計算などでも、胎児を算入できますが、

  通常は胎児の出生を確認してから申告します。

Q. 戸籍上の婚姻関係外に生まれた子は?

 

A. たとえ被相続人と血縁があっても、法律上は親子とならず相続人にはなれません。

   父親が認知をすると、非嫡出子として相続権を認められます。

 

   ただし、非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分の1/2とされています。

   この点は、憲法上論議があり、何度か裁判で争われていますが、現在のところ

   改正の動きはありません。

 

   なお、被相続人がその子の母親である場合は、出生だけで親子関係が

   認められますので、認知がなくても母親の相続人となります。

Q. 養子は相続人になりますか?

 

A. YES

  養子は、縁組をした日から養親の嫡出子となりますので、

  実子と同じように相続権を有します。

 

  また、普通養子の場合は、実親との親子関係も維持されますので、

  実親に相続が発生したときも相続権を有しています。

  ただし、特別養子の場合は、実親との親子関係は消滅していますので、

  実親に相続が発生しても相続権はありません。

 

  なお、相続税の基礎控除額などの算定では、

  養子の人数を二人までに制限しています。つまり、名前だけの養子をたくさん設けて

  相続税を抑えようとするのはだめですよ、という意味です。

 

  

法定相続とは?

民法で決められた割合で相続することです。その割合は誰が相続人になるかで変わります。

また、同じ順位の相続人が複数いる場合は、その人数で等分します。

例えば・・・

・配偶者(1/2)と子供(1/2)

・配偶者(2/3)と親(1/3)

・配偶者(3/4)と兄弟姉妹(1/4)

    ・・・となります。

 

問題となるのは、養子・非嫡出子・胎児がいる場合です。(次回へ)