2010年8月アーカイブ

特別受益の分類

特別受益を考えるとき大切なのが「遺贈」「生前贈与です。

 

「遺贈」とは、遺言によってなされる贈与であり、法律上は相続人以外の者に対してなされるものをいいますが、相続人に対するものであっても、「遺贈」と表現されることもあります。

 

「生前贈与」とは、被相続人が亡くなる前になされる贈与をいいます。

 

特別受益の対象は、すべての遺贈と一部の生前贈与です。

生前贈与のうち、「婚姻、養子縁組のための贈与」「生計の資本としての贈与」が特別受益の対象となります。

(次回は特別受益の事例)

特別受益とは

相続財産は、法定相続の割合または遺言などにより指定した割合で、分割などの手続きをするのが原則です。

 

しかし、複数の相続人のうち特定の者が、被相続人の生前に特別の金銭援助を受けていたり、生活のため不動産をもらっていた場合は、被相続人の名義として残っている財産を原則通り分割すると、相続人同士で不公平が生まれてしまいます。

 

民法では、このような問題を解決するため、一定の生前贈与を相続開始時の財産価格に加算してから、相続分を算定するように定めています。これは特別受益の持戻しとよばれます。

生命保険の有効活用

相続人が複数いるのに、財産は分けることができない不動産だけ・・・金銭で処理しようにもそれもない・・・

 

こんなときに使えるのが生命保険です。突然のことには対応できませんが、あらかじめ計画的に加入しておけば、相続のモメごとを減らすことができます。

 

ただ、よく理解して加入しないと税金がより多くかかってしまうこともあるので、注意が必要です。詳細は、次の機会に譲りますが、お金持ちの家庭でなくてもうまく使えば非常に有効な方法です。

不動産の評価

子供は2人で財産は不動産だけ・・・このようなケースでは、不動産そのものを分けることは現実的ではないので、通常はどちらか一方が不動産を継ぎ、他方には金銭で処理するのが普通です。

 

その際の金銭の額は、話し合いでまとまるのがもっともよいのですが、お互いにその基準を知らないと不満のもとになります。

 

相続の世界では、不動産の評価について次のような慣例があります。

 

1 建物の評価=固定資産評価額

2 土地の評価=近所の複数の不動産屋さんに時価を聞いて平均を出す

 

もちろん、土地の評価は不動産鑑定士さんが出す数字がもっとも説得力がありますが、費用を抑えて手間を惜しまなければ上記の方法でも充分通用します。

 

では、支払う金銭が用意できないときは・・・(次回へ)

夫には先立たれたが、子供2人はそれぞれ独立。今は夫が残してくれた自宅で、嫁にも気兼ねせずのんびり・・・。

 

最近はこのような女性が増えています。しかし、何らかの手を打っておかないと、ご自身が亡くなった後、子供たちの間でトラブルが発生し、あなたの想いが伝わらないまま子供同士が疎遠になってしまうこともあります。

 

あなたの希望を子供たちに理解してもらって、遺言を残すことがもっともよい方法ですが、実際には何か起きなければ人間は動けないものです。

 

そこで、遺言がなかったことを前提にした問題と解決策をご紹介します。

(次回へ)

事例4 相続の放棄

Hさんは、数年前に夫と離婚。小学生の子供を連れて家を出ました。

その後、夫が遺言もないまま死亡。葬儀の席で親戚の人から耳打ちされます。

 

「旦那には多額の借金があったけど、手続しないと子供に請求されちゃうよ・・・」

 

実際に請求されるかどうかは、債権者の判断ですが、民法上はこのご親戚の言うとおり、負の財産も相続人に引き継がれます。

その場合は、「相続放棄の申述書」を家庭裁判所に提出することになります。被相続人が亡くなった日から3カ月以内に、亡くなった方の住民票の除票、除籍謄本、申述人の戸籍謄本と所定の申述書を提出します。

費用は1,000円から2,000円くらいです。自分でもできますし、郵送も可能です。

 

Hさんのケースは、放棄する人が未成年なので、法定代理人としてHさんも申述書に記名しました。

戸籍の見方

見出し・戸籍事項・身分事項

 

戸籍上の「本籍」は、戸籍そのものの所在地を示すものであり、日本国内であれば自由に決めることができます。また「戸籍筆頭者」は、戸籍を管理する上で見出しの機能を持つものです。

戸籍にはこの「本籍」と「戸籍筆頭者」が最初に記載されています。

 

結婚などによって新しい戸籍が作られたりすると、その内容が「戸籍事項」に記載されます。法改正など役所の都合による変更などもここに記載されますので、その戸籍そのものの歴史が記されることになります。

 

戸籍に記載されているそれぞれの人については「身分事項」に記載されます。出生、婚姻、死亡、養子縁組、認知などが記されます。

 

遺言や遺産分割協議書で必要となる戸籍謄本は、被相続人の死亡時の最終戸籍から、編成年月日を頼りに出生時まで遡って戸籍を収集します。

 

戸籍のとり方

戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場でもらえます。通常は、1通450円の手数料がかかります。各役所のホームページで確認すれば、郵送での取得方法もわかりますので参考にしてください。

 

ただし、戸籍は個人のプライバシーに関わるため、除籍謄本は原則として戸籍に記載されている者、その配偶者、直系卑属、直系尊属以外の者は請求できません。

戸籍の歴史

戸籍は、明治4年の戸籍法で最初に編成され、その後何回か様式が変更され、今の様式は昭和22年に定められました。

様式が変わると戸籍の内容が旧戸籍から新戸籍へ移記されます。このことを「戸籍の改製」といい、旧戸籍を「改製原戸籍」といいます。

新戸籍に記載されるのは、その時点でその籍を持っている人だけなので、それ以前に籍をはずした人は記載されません。そのため、相続人の確定などの作業では、改製原戸籍も含めいくつもの戸籍が必要になります。

相続人の調査

相続が開始されたら、その相続財産を調べるとともに、被相続人と相続人の関係を調べ、相続権者を特定しなければなりません。

不動産の移転登記などでは、被相続人や相続人の戸籍謄本が要求されるので、この調査を省いた相続の手続きは、ほとんどありません。たとえ、遺言があったとしても、時間の経過とともに相続人の人数が変わることもありますので、実際にはこの調査を行っています。

とくに面倒なのが、被相続人の戸籍収集です。

その他の財産の調査

その他にも、確認しておきたい財産があります。

主なものは以下の通り・・・

 

1 自動車の車種、年型(購入時の書類や保険書類から)

2 ゴルフクラブやレジャークラブの名前、取得日(購入時書類や会員証から)

3 貸付金や未収金の相手方、金額、利息(契約書や借用書から)

4 電話加入権の番号、数量(電話の請求書や領収書から)

5 生前贈与財産の有無や納税額(契約書や申告書から)

6 借入金や未収金の相手方、金額、利息(契約書や請求書から)

被相続人が被保険者となっている生命保険は、保険会社に請求しないと死亡保険金は出ません。保険証券生命保険控除証明書確定申告書なから加入保険の種類や内容を確認してください。

 

なお、被相続人が契約者(=保険料の支払者)で、被相続人以外の方が被保険者となっているものは、保険金が支払われるわけではありませんが、保険契約の権利そのものが相続財産に含まれます。積み立て型の損害保険も同じです。

預金や株式の調査

1 預貯金

 通帳やキャッシュカードなどから、取引していた金融機関を確認して、残高証明書をも

 らってください。もし、借入金があれば、その残高証明書ももらってください。

 

2 上場株式

 配当金支払報告書や通帳の記載などから、証券会社を確認して、残高証明書を依頼

 してください。保有していた株式の銘柄と株数を確認します。

 

3 非上場株式

 株券の有無を確認し、関係の会社に問い合わせてください。

 

4 その他の有価証券(国債など)

 資料などをもとに種類、銘柄、数量を把握します。証券会社などで保護預かりになって

 いる場合は、残高証明書を依頼します。

不動産の調査

不動産(土地や家屋など)については、所在・地目・面積・構造などを正確に把握しなければなりません。いずれ、登記をしなければならないことがほとんどなので、すべての不動産について、登記簿謄本(登記事項証明書)をとっておくほうがよいと思います。

 

不動産の登記事項証明書は、その不動産がある地域の法務局でもらえます。郵送でもOKですし、誰でも申請できますが、所在地、地番または家屋番号(住所とは違います)がわからないと手間取ります。できれば、法務局へ出向いたほうが確実です。なお、手数料は原則として1通1000円です。

 

この他にも、登記済証(権利書)または登記識別情報、固定資産税の納税通知書、過去の売買契約書が調査に役立ちますが、もしすべての不動産が同一市町村内にあるとすれば、その市町村から送られてくる不動産の課税証明書で確認できます。

 

また、登記や税金の申告で必要になりますので、固定資産評価証明書を市町村でもらってください。

相続財産の調査方法

被相続人の財産について、もともと家族が管理していた場合は、それほど問題になりませんが、亡くなった方ご自身が管理していた場合は、いろいろな資料をもとに調査をしなければなりません。

 

1 まず、名刺、通帳、確定申告書、日記、手帳などから想定される取引を列挙する

2 不動産会社銀行証券会社保険会社など関連する財産を調査する

3 通帳や確定申告書などをもとに、借入金未払金未納の税金

  有無も確認する

4 被相続人が持っている金庫貸金庫も確認する

5 生前の贈与の有無も確認する

 

これらの調査は、遺産分割協議や相続税の申告において、とても重要なことです。

相続財産の調査

財産額の大小にかかわらず財産の調査が必要

 

相続では、財産額によっては相続税が発生しますので、財産を正確に把握し申告しなければ、後になって追徴課税が発生してしまうこともあります。

 

「そんなに財産がないから大丈夫」と思っている方も多いのですが、税金の問題以外にも財産調査の必要性は生じます。

 

まず、相続の放棄の問題です。もし、被相続人が債務超過になっていたら、3か月以内に手続をしなければ、その債務が相続人にかぶされてきてしまいます。少なくても、3か月以内に相続財産の概要だけでも把握しなければなりません。

 

次に、遺産分割協議の問題です。財産をきちんと把握せず、遺産分割協議が成立した後に新たな財産が見つかると、分割協議をやり直さなければならず、場合によっては相続争いの火種になりかねません。

遺言と登録免許税

相続において不動産の所有権が移ると、登記の際に登録免許税がかかります。

 

固定資産評価額 × 税率 = 登録免許税

 

税率は、「相続」であれば1000分の4、「遺贈」になると1000分の20です。

遺言書に、「相続人のOOに相続させる」と書かれていても、「相続人のOOに遺贈する」と書かれていても、相続人に対する移転であれば、いずれも「相続」とされますので1000分の4となります。

しかし、たとえ「相続人以外のOOに相続させる」と書いても、そもそも相続人以外に相続させることはできませんので、税率も「遺贈」が適用され1000分の20となります。

遺言と相続税

「配偶者に対する相続税額の軽減」と「小規模宅地等の特例」

 

遺産額が大きい場合、相続税も考えなければなりません。相続税は、遺産分割の方法によって納付額が変わることがあり、財産の取得者が誰であるかによって、相続人全体の納付額も変わってきます。

 

被相続人の配偶者の場合、相続財産の価額のうち法定相続分の相当額または1億6000万円のいずれか多い金額に対応する相続税額は税額控除されます。したがって、配偶者にはこの上限ぎりぎりまでなるべく多く相続させたほうが税金の上では有利となります。

 

また、被相続人の事業用宅地、居住用宅地なは、法律で決められている一定のものに取得させると、その相続税評価額から80%が減額されます。したがって、このような資産も適用対象者に相続させることが節税につながります。

 

なお、相続税の申告は、被相続人が亡くなった日から10カ月以内ですが、申告書の提出時に財産が分割されていなければ、上記の特例は適用されません。したがって、税務上から見れば、遺言における「遺産分割の禁止」は必ず不利に働いてしまいますので注意してください。

遺言書に書けること

遺言に書くと、法律上の効力が与えられるのは・・・

1 遺贈など財産の処分に関すること

2 相続分の指定などに関すること

3 認知など身分に関すること

・・・に大別されます。

 

具体的には・・・

1  認知

2  後見人や後見監督人の指定

3  遺贈や寄付

4  遺贈の減殺方法

5  廃除やその取り消し

6  相続分の指定や、指定の委託

7  特別受益者の持ち戻しの免除

8  遺産分割方法の指定や、指定の委託

9  遺産分割の禁止

10 共同相続人間の担保責任の指定

11 遺言執行者の指定や、指定の委託

12 信託の設定

また、法的な効力はなくても、「家族は仲良くすること」とか「葬儀は質素にすること」などを書くこともできますし、家族へのメッセージもOKです。

遺言執行者

遺言の内容(たとえば不動産の登記、動産の引渡、認知の手続など)を実行することを遺言の執行といいます。そして、その執行をする人を遺言執行者といいます。

遺言執行者は、遺言で指定もできますし、その指定を第三者に委託することもできます。また、複数指定してもかまいません。

一方で、指定された人は必ず遺言執行者にならなければならないわけではなく、拒否することもできます。指定された人が拒否したり、遺言に遺言執行者の指定がなかった時は、相続人などが裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。

遺言執行者は遺言手続に関する一切の権限を有するため、相続人などがその執行を妨げてはなりません。

なお、遺言執行者の報酬は、遺言で決められていればそれに従い、決められていないときは裁判所が決めます。報酬や執行の費用は、相続財産の中から支出されますが、相続開始後に支出されるものであり、被相続人の債務ではないので、相続税の債務控除は適用されません。

遺言書の確認

死亡届の提出、葬儀の準備を進めつつ、遺言書があるかどうかについても、早急に確認する必要があります。遺言書があるにもかかわらず、相続人同士で遺言と違う遺産分割をすると、後でやり直しをしなければならないこともあります。

 

遺言書があった場合、もしその遺言書に封印がされていたら、その場で開けてはいけません。相続人やその代理人が立ち会って裁判所において開封する必要があります。

 

また、公正証書遺言以外の場合は、裁判所がその内容や体裁を確認し、偽造・変造を防止する「検認」の手続きも必要です。なお、「検認」は遺言書の単なる保全の手続きであり、遺言の効力とは関係ありません。もし、遺言の内容が強迫などにより、本人の真意と違っていても、「検認」の手続きではなく、「遺言の無効確認の訴え」などで争う必要があります。同様に、遺留分に反する場合も、「遺留分減殺請求」を別に行うことになります。

 

ちなみに、封印のある遺言書を勝手に開封したり、「検認」を怠った場合は5万円以下の過料となります。

死亡届の提出

今、ニュースで騒がれている100歳以上の方の所在不明問題。一つの事件が発端となっているので、大きく取り上げられていますが、その原因の多くが死亡届が出されていないことにあると思われます。

 

人が亡くなると葬儀の準備をしなければなりませんが、実は死亡届の提出が最初の手続きです。亡くなった方の住所地の市区町村へ死亡後7日以内に提出します。

死亡届を提出しないと火葬許可や埋葬許可が出ませんので、通常は葬儀屋さんが出してくれると思います。

 

ただ、死亡届に添付する「死亡診断書」は担当のお医者さんなどから頂いて、葬儀屋さんに渡しておかなければなりません。なお、警察の検死となった場合は「死体検案書」になります。これらの書類は、生命保険金の請求でも必要になりますので、必要枚数をよく計算してお医者さんにお願いして下さい。

(けっこう高いです。私の身内のときは1枚につき1万円でした)

税金をどうするか?

相続では、遺産額が大きければ相続税が発生しますが、これ以外にも考えなければならないことがあります。

 

1 被相続人が亡くなった年の所得税や消費税の精算

2 被相続人が事業を行っていた場合の手続き

3 被相続人の事業を相続人が承継した場合の手続き

 

これらの手続きにも期限が決まっているものが多く、注意深くスケジュールを立てないと手続きが無効になってしまったり、納税者に不利になってしまうこともあります。

まず、相続が開始されると相続財産を引き継ぐための手続きが必要になります。

 

1 自筆証書遺言があれば裁判所での検認

2 戸籍の収集と相続人の確定

3 相続財産の調査と評価

4 相続の承認、放棄、限定承認の手続き

5 相続人が未成年者であれば特別代理人の選任

6 遺産分割協議

7 相続財産の登記など

 

これらの手続きは、後にご説明します相続税などと密接に関わりますので注意が必要です。