2010年9月アーカイブ

相続放棄と相続税

相続放棄をすると、原則として相続税はかかりません。

しかし、生命保険金や死亡退職金を受け取ると、相続税の対象となります。

 

なお、遺産全体の相続税を計算するときの基礎控除では、放棄した人も含められます。また、未成年者控除や障害者控除も適用されます。

 

つまり、相続放棄は税金の観点だけみると、放棄した人だけが不利益となり、相続人全体としては影響がないといえます。

相続放棄をすると

相続人の一人が「相続放棄」をすると、その相続人は相続開始時から相続人ではなかったとみなされます。

 

例えば・・・

 ・配偶者と2人の子供がいた場合、法定相続人は3人ですが、子供の1人が相続放棄

  すれば、相続財産は配偶者が2分の1、放棄しなかった子供が2分の1を相続しま

  す。

 ・配偶者と1人の子供、さらに被相続人の兄がいた場合、法定相続人は配偶者と子供

  ですが、子供が相続放棄すれば、相続財産は、配偶者が4分の3、兄が4分の1を相

  続します。

 

なお、相続放棄は代襲相続の原因にはなりません。

相続の放棄や限定承認は、原則として被相続人が亡くなった日から3カ月以内に手続をしなければ認められません。相続財産を調査し、債務超過の有無を確認するための熟慮期間が3カ月ということになります。

 

相続財産の内容が複雑であったり、債務の確認に時間がかかるなどの理由があれば、この熟慮期間の延長も認められることがありますが、その前提として、相続開始から3カ月以内に、家庭裁判所に対して期間延長の請求をしなければなりませんので、やはり被相続人が亡くなった日から3カ月以内に何らかの手続は必要になります。

相続放棄

相続放棄の手続き

 

相続の放棄をするには、原則として被相続人が亡くなった日から3カ月以内に、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出しなければなりません。

提出先は、原則として被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。添付書類は、申述人や被相続人の戸籍謄本などですが、誰が相続を放棄するのかによって添付書類が変わりますので、事前に家庭裁判所に確認してください。

申立費用は800円(収入印紙)、その他に連絡用の郵便切手が必要です(各地域の家庭裁判所によって異なります)。

 

もし、相続の放棄をしたい人が未成年の場合は、父または母が法定代理人として手続をします。ただし、その法定代理人とその未成年者が共同相続人の場合は、利害が対立する立場でもあるので、代理人にはなれず、特別代理人という人を選任する必要があります。(特別代理人については後日詳細)

 

家庭裁判所での「相続放棄申述書」の審査は、記載内容や本人の真意を確認するだけの形式的なものです。郵送でも受け付けますが、本人が家裁に出向いて手続きすれば、通常はわずかな時間で認められます。

単純承認

一般に「相続する」という場合は、単純承認の相続を指します。相続人は、すべての財産と債務を引き継ぐことになります。相続人がその債務を弁済しなければ、債権者は強制執行することもできます。

 

被相続人が亡くなって3カ月以内に相続の放棄か、限定承認をしなければ自動的に単純承認をしたものとされます。。

 

また・・・

・ 相続人が相続財産を処分したとき

・ 限定承認・放棄をした後でも、相続財産を隠したり、私的に使ってしまったり、わざと財

  産目録に書かなかったりしたとき

               ・・・は単純承認をしたものとされます。

 

相続の承認と放棄

相続人は、原則として、相続が開始したときから、被相続人の財産に属する権利義務のすべてを継ぐことになります。しかし、被相続人の財産には、債務(消極財産)も含まれるので、相続人は相続によって利益を受けるとは限らないのです。場合によっては、債務超過の状態かもしれません。

 

そうなると、相続人は相続によって、その生活にすら困ってしまうことさえあります。

 

そこで、民法では、被相続人の財産を継ぐか否かを選べようにしています。

 

1 単純承認(無条件・無制限で継ぐ)

2 限定承認(条件付きで継ぐ)

3 放棄(一切継がない)

寄与分の決定

寄与分は、相続人の話し合いで決めるのが原則です。遺産分割の協議の際に、寄与分のことも併せて話し合うことになります。

 

もし、話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に決めてもらうことになります。寄与分について話し合いがまとまらないということは、遺産分割の協議もまとまらないことがほとんどなので、寄与分の決定と遺産分割の調停を同時にお願いすることになります。

 

寄与分とは

相続や遺言では、特別受益と並んで「寄与分」についても考えなければなりません。

 

相続人の中に、被相続人の事業への労務の提供財産の給付、被相続人の療養看護などによって、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいたときは、相続分とは別に相続財産を取得できるというものです。

 

子供が無報酬で親の仕事を手伝ったようなケースが典型例ですが、問題となるのが「療養看護」です。親の療養看護は大変な苦労と負担を伴いますが、そもそも親子間には扶養義務があるので、通常の看護では「特別の寄与」とはいえません。ただし、その看護によって、付添人の費用などを払わずに済んだというのであれば、寄与分が認められる可能性はあります。

 

上記のように「通常の寄与」と「特別の寄与」の区別はあいまい、明確な基準はありませんので、遺言で被相続人がその意思を表示しておくか、相続人同士で話し合って決めることになります。

特別受益の評価

特別受益にあたる財産は、どのように評価すればよいのでしょうか?

 

前にも申し上げた通り、相続人の間で話し合いによって決めるのが最も望ましいことです。しかし、こじれてしまうと、なかなかうまくまとまりません。そこで、裁判沙汰になっても対応できる評価の基準を知っておくことだけでも、安心しますし、話し合いにも良い影響を与えます。

 

特別受益は、贈与時の価格ではなく、相続開始時の価格で評価されるのが通説となっています。金銭による生前贈与の場合は、贈与時の貨幣価値を相続時に換算しなおします。

 

では、生前贈与された財産が、相続開始時にはなくなっていたらどうなるでしょう?

 

たとえば、生前贈与された不動産が相続開始前に売却されたときなど、受贈者自身の行為によって存在しない場合は、相続開始時にもその財産が存在するものとして評価します。

 

また、生前贈与された家屋が天災で燃えてしまったときなど、受贈者の行為によらずに存在しない場合は、特別受益はないものとされます

 

なお、被相続人は遺言によって、特別受益の持戻しを免除することができます。

特別受益の範囲

特別受益の対象は、すべての遺贈一部の生前贈与です。

 

生前贈与のうち、婚姻、養子縁組のための贈与生計の資本のための贈与が特別受益とされています。

 

たとえば、結婚の際の持参金や嫁入り道具、子供が新たに事業を始めるときの資金、独立して生活するときの土地や建物などです。

しかし、結納金や挙式費用は特別受益にあたらないと考えられています。また、生命保険は相続人が受け取っても、被相続人の遺産には含まれませんが、相続分を算定するときだけは特別受益にあたるとされます。

 

いずれも判例や学説の積み上げで構築された理屈ですので、裁判になってしまったらこんな方向性になるという程度の理解でいいと思います。

 

特別受益の事例

Aさんが亡くなりました。亡くなった時の財産は4億円です。

相続人は、Aさんの妻と3人の子供たちです。

 

Aさんは遺言によって3000万円を子Bに遺贈しました。

子Cは、生計の資本として2000万円の生前贈与をAさんから受けていました。

 

さて、妻と子供たちはそれぞれいくらの相続分があるでしょう?

 

まず、亡くなった時点の財産に、すでになされた生前贈与を加算します。これが持戻しです。

 4億円+生前贈与2000万円=4億2000万円

(なお、3000万円の遺贈はAさんが亡くなった後に行われるため、持戻しはしません。)

 

このことにより、本来の相続財産が4億2000万円であることがわかりました。

法定相続分は、妻が2分の1、子が2分の1です。それぞれの子供は、さらに頭割りになるので・・・

 妻 ・・・4億2000万円×2分の1=2億1000万円

 子B・・・    〃    ×2分の1×3分の1-遺贈3000万円=4000万円

 子C・・・    〃    ×2分の1×3分の1-生前贈与2000万円=5000万円

 子D・・・    〃    ×2分の1×3分の1=7000万円

ただし、子Bは4000万円の相続を受けるほかに、3000万円の遺贈を受けることになります。

 

これが、持戻しの例ですが、実際には生前贈与の時期や価額を出すことが面倒なので、話し合いでこのくらいだろうという感じで決まっていきます。でも、モメてしまったときはこの特別受益が重要になります。