2011年4月アーカイブ

せっかく遺産分割協議をまとめても、その協議に一部の相続人が参加していなければ、原則として無効となります。(失踪宣告の取り消しや死後認知の場合を除く)

逆に、相続人ではない者が参加した遺産分割協議はどうなるでしょうか?

もし、この結果、相続順位が変わってしまっていたら、遺産分割協議は無効と考えられています。でも、相続順位が変わっていないのであれば、相続人でない者に分割された財産を返還してもらい、本当の相続人どうしで再分割すればよいとされています。したがって、この場合はもとの遺産分割協議まで無効となるわけではありません。

 

ゴルフ会員権を相続した場合、その名義を変更するためには、そのゴルフ会員権がどのような種類のものかを確認しなければなりません。

1.預託金会員制における会員権

2.株主会員制における会員権

3.社団法人制における会員権

・・・などがあります。いずれの場合も会則や運営規則によって、相続やその手続きについて定めていることがほとんどですので、よく確認してください。ただし、とくに3の社団法人制では会員権の相続を認めていない場合も多いので、注意が必要です。

 

また、特定の動産(自動車・船舶など)には登録制度がありますので、それぞれの手続きに従って名義を変更する必要があります。

株式の名義変更

民法上、相続財産にあたる株式は、相続が開始されると相続人全員の準共有になります。したがって、それぞれの相続人は自分の法定相続分に相当する数の株式であっても、単独で名義書換をすることはできません。会社に対して、名義書換を請求するには相続人全員の合意が必要となります。なお、株券を発行している会社の株式を相続したが、株券が見つからないときは再発行などの手続きを経てから名義書換になりますので、予想より時間がかかることもあります。

預貯金の名義変更

預貯金は民法上、金銭債権であることから、相続が開始されると当然に法定相続分に応じてそれぞおれの相続人に分割されるとするのが判例です。もし、遺産分割を行った場合も、相続開始の時にさかのぼって各相続人が預貯金を取得します。特定遺贈があった場合も、同様に相続開始時から受遺者に移転します。

ですから、本来は相続人や受遺者は銀行などに対して、自分が相続人や受遺者であることを証明するだけで当然に払い戻しや名義変更ができるはずです。

ところが実際は、銀行などの金融機関は、受遺者を含む相続人どうしの争いやもめごとに巻き込まれることを避けるために、実に様々な書類と手続きを要求してきます。遺産分割協議書がなくても手続きは可能ですが、原則として相続人全員の実印は要求してきますので大変なのは同じです。中には、不動産の名義変更よりも手間と時間がかかる金融機関もあります。

預貯金の名義変更には、不動産の名義変更と同じくらいの労力がかかるというくらいのつもりでいておいたほうが無難です。

不動産の名義変更

相続に伴い不動産の名義を変更するには、法務局で登記をしなければなりません。期限はありませんが、登記をしなければ自分の意思で売却などを行うことができません。また、次の相続が起こるとさらに登記の手続きが複雑になりますので、なるべく早く済ませてください。

 

登記実務の専門家は司法書士などですので、ぜひ相談してみてください。参考までに、遺言の有無による登記の違いをお知らせいたします。

1.遺言がある場合

「相続させる」という遺言があると、取得する相続人が単独で「相続」を原因とする登記申請をすることになります。

「遺贈する」という遺言があると、原則として遺贈を受けた人と遺言執行者(または相続人全員)が共同して「遺贈」を原因とする登記申請をすることになります。

2.遺言がない場合

相続が開始されると、亡くなった人の財産は相続人全員の共有になりますので、遺産分割協議がなくても、「共同相続登記」はできます。

もちろん、「共同相続登記」をしなくても、遺産分割協議が行われれば、その不動産を取得する人が単独で「相続」を原因とする登記申請ができます。

「共同相続登記」が行われていた場合は、不動産を取得する人と、他の相続人全員が共同して「遺産分割」を原因とする持分移転の登記申請をすることになります。

遺産を分割する話し合いが行われ、参加者の合意が得られたら、通常は「遺産分割協議書」という書面を作成します。民法上は、わざわざ書面を作ることまで要求しているわけではありません。

しかし、口約束だけではせっかくの話し合いが蒸し返されてしまう危険もあります。そして何より不動産の相続登記をする際には、ほとんどの場合「遺産分割協議書」の提出を求められますので、作らざるをえません。

 

「遺産分割協議書」には定型の書式があるわけではありませんが、注意すべきポイントがいくつかあります。

1.亡くなった人や相続人の氏名、本籍、住所、生年月日、続柄を記載する。

2.氏名や住所は、印鑑証明書に書いてあるとおりに記載する。

3.不動産は、登記簿謄本に書いてあるとおりに記載する。

4.相続人は実印を押し、氏名は自署が望ましい。

5.書類が2枚以上になったら、全員の契印を押す。

・・・などです。その他にも細かいポイントがあります。また、家族の関係は家族によって様々ですので、少しでも通常と違う要素があれば、すぐに作業は立ち往生します。「この際、法律のことを勉強してみたい」というのであれば、ご自分たちで作ってみることもおススメしますが、単に費用を抑えたいという理由だけでは、あまりの手間と労力のため挫折することになり、かえって費用がかさむことにもなりかねませんので、なるべく早い段階から専門家に相談してください。

遺産である不動産などの現物を分けたり、代償分割をすることが難しいときは、遺産を売却した代金を、配分することになります。裁判上の遺産分割手続きでは、現物分割や代償分割が難しいか相当でないという理由が必要になりますが、話し合いによる遺産分割手続きではこのような理由は不要ですので、しばしば使われる方法です。

ただし、不動産を売却すると多くの場合、様々な費用がかかります。測量、造成、売却手数料、所得税などなど・・・相続では、こうした費用を甘く見積もって考えてしまう方が多く、フタを開けたら手にした代金がびっくりするほど少なかったということもありますので、慎重に検討してください。

また、株式なども相場がありますので、かつて亡くなった方から聞いていた価格と大きく違うことがあります。遺産の現状は、なんとなくの情報に頼らず、面倒でも相続人が自ら確認してから判断しなければなりません。

相続財産は自宅の土地と建物しかないのに、相続人が二人いるため事実上分けることができないとき、その不動産は一人の相続人がすべて取得する代わりに、取得した人が一方の相続人に、相続分に応じた金銭を支払う方法が採られることがあります。これは「代償分割」と呼ばれます。

家庭裁判所に遺産分割の審判を申し立てると、「特別の事由」がないかぎり「代償分割」の方法が採用されることはありませんが、当事者間の話し合いにおいては「代償分割」も自由です。

「代償分割」の方法を使うには、財産を取得した人に手許資金が必要です。そこで、「代償分割」となる可能性が高いご家族では、生命保険を活用して「代償分割」の資金を準備しておくと安心です。ただし、契約方法を間違えると「代償分割」に活用できませんのでご注意ください。

遺産分割の際、現物を換金することなくそのまま配分するのが原則です。ただし、遺産分割協議がまとまらないときなどは、各相続人に単独で所有させるのではなく、複数の相続人の共有として所有させる方法が使われることもあります。共有による方法は、遺産分割協議そのものは比較的スムーズに進めることができますが、一人の意思だけでは売却などができないため、その後の相続人どうしの関係に課題が残ることもありますので、慎重な検討が必要です。

遺産の分割は、その全てを一回で分割することが原則であり、関係者の様々な負担を考えても、それが理想的です。

しかし、遺産が分けにくい物であったり、話し合いが進まないために、全ての遺産を同時に分割できないこともあります。実務上も、少しずつ段階的に遺産分割を進めることはよく行われています。

遺産の一部を分割する場合は、遺産分割協議書に一部の分割であるこその他の遺産の分割に与える影響を明記しておくことが望ましいといえます。なぜなら、遺産の大部分を占める財産が遺産分割協議の対象からはずされている場合や、分割されていない財産だけでは相続人どうしの公平が確保できない場合は、すでに行われた一部の分割も無効となる恐れも否定できないからです。

遺産分割協議の時期

遺産分割を請求する権利には、消滅時効がありません。したがって、原則として何年後であっても遺産分割協議をするよう求めることはできます。

しかし、相続とは関係のないところで第三者による取得時効が完成してしまうことはありえます。また、時間の経過とともに、相続人の誰かが亡くなったり、遺産の価値が変わってしまったりすることがあります。遺産分割の協議を理由なく延ばすことは、事態を複雑にしてしまう可能性がありますので、ご注意ください。

さらに、相続税が発生するような場合は、遺産分割協議を前提としている各種の特例がある上、それらの遺産分割協議の時期に制限がありますので、協議が遅れると納税額が増えてしまうことになります。

ある親子がちょっとしたことからケンカして、怒った親がケンカした子どもに財産を渡すまいと遺言書を残しました。ところが、少し時間がたつと「ちょっと感情的になりすぎたな・・・」と親も反省し、遺言書の書き換えを考え始めます。そんな矢先に親が急逝。

こうなると遺言書は当初のまま有効となり、子どもには遺留分以外の財産は渡りません。他の相続人もその子どもに応分の相続があるべきだと思っていますが、こんなときはどうすればよいのでしょう?

 

通説では、相続人と受遺者の全員が同意すれば、遺言と異なる遺産分割も可能とされています。

ただし、遺言執行者がいる場合は問題です。遺言執行者がいると、相続人は遺産の管理処分権を失い、相続人の希望に関係なく遺言の内容を実現することができます。遺言と異なる遺産分割に遺言執行者が同意することは可能であるという判例はありますが、同意しなかったからといって遺言執行者がその任務違反を問われることはありません。遺言執行者は、遺言の内容を実現することが本来の仕事であるので、相続人の希望に反することもあるという前提に立っています。

 

感情的な対立が原因となって、遺言書が書かれることはよくあります。しかし、こうした感情の捌け口として、ましてや家族の感情の問題に遺言書を利用することはおすすめできません。他人以上に頭にくることがあるのは、家族であるからなのです。ケンカした相手の気持ちも、自分の気持ちも時間とともに変化するということだけは、忘れないでください。

自分の遺留分を侵害された人は、その遺留分の範囲内で、財産を取り戻すことができます。この権利は「遺留分減殺請求権」と呼ばれます。

すでに行われた遺贈や贈与も「遺留分減殺請求権」の対象となります。また、判例では特別受益も対象となるとされています。

「遺留分減殺請求権」を行使するためには、遺留分の侵害によって直接の利益を受けた人に対して意思表示することが必要です。とくに、裁判上の請求などが必要ではありませんが、実務上は内容証明郵便などを使います。

このような手続きだけで、侵害された遺留分は取り戻されますので、極めて強い権利といえます。遺留分の返還の請求を受けた人は、現物を返還しなければなりませんが、価額で弁償することも可能です。

 

「遺留分減殺請求権」は、遺留分を有する人が、相続の開始と遺留分の侵害を知ったときから1年間行使しないと時効によって消滅します。また、相続の開始から10年が過ぎたときも消滅します。

遺留分とは

生前贈与や遺贈(遺言による贈与)は、財産を持つ人の意思だけで決めることができます。ただし、「遺留分」によって、一定の制限を受けます。

「遺留分」とは、一定の相続人に、一定の相続権を保証するものです。亡くなった人の財産の処分は亡くなった人の自由であるべきですが、近親者の生活も守らなければならないし、相続に対するある程度の期待権も保護すべきだろうという趣旨があります。

「遺留分」を持っているのは、配偶者、子ども、直系尊属(父母・祖父母など)だけです。兄弟姉妹には「遺留分」はありません。胎児や、子どもの代襲相続人にも「遺留分」があります。ただし、相続欠格、相続廃除、相続放棄によって相続権を失った人には「遺留分」はありません。

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人のときは3分の1、その他の場合は2分の1です。例えば、子ども二人が相続人のときは、法定相続割合がそれぞれ2分の1ですので、遺留分を主張できる割合はそれぞれ4分の1ということになります。したがって、仮にその子ども二人の親が、一方の子どもだけに全ての財産をあげるという遺言書を書いても、まったくもらえなかった子どもも4分の1までは相続権を主張できることになります。

よく、子どものいないご夫婦は、遺言を書いておくべきだといわれます。それは、上記のとおり兄弟姉妹に遺留分がないことから導かれるアドバイスです。「書いておくべき」というよりも、「書いておくだけで」何の法的問題もなく、配偶者に全ての財産を残しておくことができます。

遺言執行者

遺言執行者とは、遺産の管理など遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をするために選任される者をいいます。遺言を書いた人が亡くなった後、相続人などの利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任しますが、遺言であらかじめ指定しておくことも可能です。

法定相続割合と異なる遺言を遺す場合は、遺言執行者を指定しておくべきと考えます。とくに「遺贈」をする場合は、強い権限を持つ遺言執行者に託すことにより、他の関係者や金融機関との折衝においても、遺言を書いた人の希望を強く主張することになるので、遺言の内容が確実に実現できます。

遺言書を書くことにより、法定相続分と異なる相続分を指定することができます。ただし、遺留分による制限には注意が必要です。

また、遺言書には誰がどの遺産を取得すべきかについても書いておくことができます。この場合、原則として相続人はその意思に従い遺産分割協議をすることになります。

なお、厳密に言えばどの遺産を○○に「取得させる」という表現が正しいのですが、たとえ「相続させる」という表現でも、判例上は同じように扱うものとされています。したがって、実務上でも「相続させる」という表現が多く使われています。

「遺贈」には、2つの方法があります。

 

例えば、遺言書に「遺産のうち、この土地はAさんにあげる」と書いてあれば、書いた人が亡くなると同時にAさんがその土地を取得することになります。これを「特定遺贈」といい、その土地は遺産分割協議の対象から外されます。もちろん、この土地以外の遺産については、遺産分割協議が必要です。

もし、遺産のすべてについて、「特定遺贈」がなされていれば、遺産分割協議は不要です。

 

例えば、「Aさん・Bさん・Cさんに遺産の3分の1ずつあげる」というように、割合で遺贈することもありますが、この場合は割合しか示されていませんので、具体的にどの財産を取得するかについての遺産分割協議が必要になります。なお、「遺贈」を受ける人は相続人と同じ権利と義務があります。したがって、相続人が遺産分割協議をするときは、「遺贈」を受ける人も参加させる必要があります。

もし、「Aさん一人にすべて遺贈する」と書かれている場合は、遺産分割協議は不要です。