2011年9月アーカイブ

 2週間後、Aさんから「遺言書の謄本をもらった」という連絡をいただきました。すぐにお伺いし、遺言書を確認したところ、やはり全ての財産をAさんに相続させる旨の内容でした。

 

 このように遺言がされていた以上、遺留分に関することを除き、お母さんの想いに基づいて相続を行うのが大前提です。しかし、Aさんは遺言書を目の前にしてもなお、この相続は田舎の弟が受けるべきだという気持ちは変わりませんでした。

 

 今回のケースのように、遺言書と異なる遺産分割手続は判例上認められています。しかし、判例上認められたということは、そこで裁判になるほどのトラブルがあったということです。この判例は、相続人と遺言執行者が対立したケースでした。相続人が遺言と異なる遺産分割をしようとしたが、遺言執行者があくまで遺言をされた方の意志を尊重しようとしたため裁判になったようです。

 

 Aさんのお母さんが作成された遺言書には遺言執行者は指定されていません。Aさんにはご主人はいませんがお子さんが一人いらっしゃいます。お子さんからすれば、遺言書がしっかりあるにもかかわらず、母親のAさんがその権利を行使しないのはおかしいと後になってトラブルになる可能性もあります。

 そのため、遺言書と異なる遺産分割をするにしても、もうひと工夫必要になりました。

 Aさんのご自宅に伺い、今日までの経緯を詳しくお聞きしました。すると「生前、母は『土地や預金のことはすべてAに任せる』といい、ナントカ役場で手続きしてある言っていました。近所の○○さんにも一緒に行ってもらったらしい。」ということでした。

 

 このお話からAさんのお母さんは生前に遺言書を公証役場で作成した可能性が極めて高いことがわかりました。そこで、まずは遺言書の存在とその内容を確認しなければなりません。しかし、お母さんの遺品の中には、遺言書らしきものは見当たらなかったとのことでした。

 

 この場合、相続人であれば公証役場で遺言書を確認することができます。公証役場は全国にありますが、お母さんがどこの公証役場を利用したのかわからないのですが、まずはお母さんのご自宅に近い公証役場へ出向いてもらうことにしました。

 全国の公証役場は、コンピューターで連携をとっているので、お母さんが利用した公証役場でなくても、遺言書の存在と利用した公証役場だけは確認することができます。

 必要書類は・・・

 ・お母さんが亡くなったことを示す戸籍謄本、住民票の除票

 ・Aさんが相続人であることを示す戸籍謄本

 ・Aさんの免許証などの身分証明書

 ・Aさんの印鑑

・・・でした。Aさんはこれらの書類を持って、田舎への挨拶なども兼ねて、お母さんが利用した可能性の高い地元の公証役場へ行くことになりました。

 プロフィールにもありますが、私の前職は代議士秘書です。その頃にとてもお世話になった方から、ある日お電話をいただきました。

 「俺の身内に相続で悩んでいる奴がいるので、相談に乗ってやってもらえないか。」

とのことでした。

 

 お電話をしてくださった方のお話の雰囲気では、単に相続の「手続き」がわからないのかな?と思いましたが、とりあえず悩んでいるご本人に電話をしました。

 

 ところが・・・

 ご相談者は都内に住むAさん(女性・55才)です。

「3ヶ月ほど前に地方に住んでいる母が亡くなりました。父はすでに数年前に亡くなり、自宅や畑などの不動産はすべて母の名義になっていました。私は一人で東京に住んでいて田舎に帰るつもりもありませんし、不動産などは今後も地域での付き合いを続ける私の弟が継ぐべきだと思っています。でも、気になることが・・・母は生前に『すべてAに任せる』みたいなことを何回か言っていました。遺言書を書いたみたいなんですけど、どうしたらいいんでしょうか?」

 

 ・・・もし、お母さんの遺言書があるのであれば、原則としてそのご遺志に基づいて相続をしなければなりません。詳しいお話をお聞きする必要がありましたので、3日後にご自宅に伺うことになりました。

献体について

献体とは、医学・歯学の大学での解剖学の教育などに役立てるためご自分の遺体を提供することをいいます。

献体をしたい場合は、生前に特定の大学やその関連団体、もしくは(財)日本篤志献体協会に登録しておく必要があります。

 

献体の登録をした方が亡くなっても、葬儀は通常どおり行うことができます。葬儀が終わったあと、ご遺体は火葬場ではなく大学に向かうことになります。教育・研究に必要な処置が終われば、大学の負担で火葬され、ご遺骨が家族のもとに帰ります。火葬やご遺体の移送の費用は大学が負担しますが、献体の報酬はなく、献体に際しての条件もつけることはできません。また、ご遺骨が帰るまでに長い方だと3年以上に及ぶこともあります。

 

家族の同意

献体登録をしていても、その場になって反対されるご家族がひとりでもいらっしゃれば献体はできません。(財)日本篤志献体協会では、配偶者、子、親、兄弟姉妹の同意を求めています。突然、献体登録の事実を知った家族は驚き、戸惑いますので、日頃から理解をしてもらえるようにしておく必要があります。

実務上、「死後事務委任契約」で対応することもありますが、これは身寄りのない方に有効な方法といえます。家族構成や関係によってはスムーズに進まないケースもありますので、法的な備えがあっても、家族との情緒的な関係はご自身の努力で改善・維持しておかなければなりません。

 

なお、大学によっては、学内の納骨堂や慰霊碑に合祀することも可能です。

 

臓器移植法が施行された今日でも、臓器移植を希望している人のすべてのケースで臓器移植が行われているわけではありません。

 

原因の一つに「臓器提供者の意思を誰も知らなかった」という場合があります。こうした事態を避けるためには、何らかの方法であなたの気持ちを誰かに伝えておかなくてはなりません。

一般的には、「臓器提供カード」や「アイバンク」が有名ですが、多くの場合、記入したカードをしまいこんで誰にも気付かれなかったということがあります。「臓器提供カード」には家族の署名欄もありますので、これを利用して家族にはあなたの気持ちを確認してもらうことが大切です。

 

脳死と臓器移植

平成10年に臓器移植法が施行され、脳死状態の方からの臓器移植が可能となりました。また、昨年(平成22年)には改正では年齢制限が撤廃され、18歳未満からの臓器提供も可能となりました。

 

生命倫理、提供する側の葛藤、提供される側の希望、医療現場での悩みなど、生と死に関わる問題だけに社会全体が認める正解はなかなか見出せません。しかし、個々人がこの問題にぶつかったときは、否が応でも選択を迫られますので、遺言に関連するものも含めて知識としての対処法は知っておくべきではないかと思います。

在宅での介護は、介護保険による様々なサービスを受けられる時代にあっても、やはり家族の役割には大きいものがあります。そして、家長夫制が崩れたとはいえ、実質的に長男などのお嫁さんが介護の中心にいるご家庭も多いのが現状です。

 

しかし、いくらお嫁さんの介護が献身的であなたとの信頼関係が強固であっても、あなたとは法律上の親子関係がないため、養子縁組をしなければお嫁さんは相続人になれません。養子縁組は手続きは難しくないのですが、お嫁さんの実家も巻き込んだ心理的葛藤が生じやすく、よかれと思って提案したことがかえってお嫁さんを苦しめることもあります。

 

また寄与分」の制度を応用する見解もあります。相続人の中に、あなたの財産の維持や増加に特別の貢献をした人がいるときは「寄与分」として遺産分割で考慮するものです。お嫁さんは相続人ではありませんので、お嫁さん自身には寄与分は認められません。お嫁さんの貢献をお嫁さんの配偶者(例えばあなたの長男)の寄与分として認めるという判例があります。

しかし、このような判例もあるというレベルの話で、実際には容易に認めてもらえるものではありません。また、あくまで相続人同士の話合いからスタートし、こじれて裁判所に行くというパターンですので、あなたが望んでいた形とはいえないでしょう。

 

そこで、熱心に世話をしてくれたお嫁さんに財産を遺そうと考える場合、通常は遺言書を作成し遺贈するという方法を使います。もちろん、ここでも他の相続人が持つ遺留分には配慮が必要です。また、なぜこのような遺贈をするのか他の相続人にあてたメッセージを付言事項に書いておくことが大切です。

再婚によって、子どものいるパートナーと一緒になるケースも増えていますが、これだけで結婚相手の子ども、いわゆる連れ子との間に法律上の親子関係が生じるわけではありません。したがって、連れ子には相続権がなく、もし自分の死後その子に財産をあげたいと考えるのであれば、対策が必要になります。

 

遺言書による遺贈

連れ子が相続人にあたらない以上、遺言書によって遺贈することが必要です。ただし、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり、その点に配慮しなければならないことは他の事例と同様です。

 

養子縁組

法律上の親子関係を生じさせ相続権を与えるためには、あらかじめ連れ子と養子縁組をする方法もあります。子どもが未成年の場合、家庭裁判所の許可が必要ですが、連れ子の場合は不要となります。市区町村に養子縁組届を出すだけで成立します。

ただし、一度養子縁組をすると結婚相手と離婚しても、連れ子との親子関係は解消されません。親子関係も解消するためには、別に養子との離縁の手続きが必要です。

 

連れ子への遺贈や相続の場合、とくに先妻の子どもとの関係が問題となります。遺言の円滑な実現のためには、遺言執行者を指定しておくとともに、付言事項を有効に使って先妻の子どもの気持ちに配慮するべきでしょう。

内縁とは、婚姻の届出をしていないものの、実質的に夫婦としての生活を営む関係をいいます。最近では、携帯電話の家族割引など様々なサービスで婚姻に準ずる取り扱いがされていますが、法律上の配偶者ではない以上、夫の相続権はありません

 

したがって、内縁の配偶者に財産を遺すためには、遺言書で遺贈する必要があります。しかし、この場合も相続人には遺留分がありますので、それに配慮するとともに、遺言執行者を指定しておくことが大切です。

生涯独身でお子さんもいない方の場合、高齢になり兄弟も亡くなると「自分には相続人はいない」と思われる方がいます。

その場合でもご兄弟の子ども、すなわちあなたの甥や姪が相続人となることがあります。まずは、本当にご自分に相続人がいないかどうかを確認しておく必要があります。

 

もし、本当に相続人がいない場合には、あなたが亡くなるとその財産は法律上、国の財産となります。

それなら、いっそのことお世話になった方に財産をあげたい考える方も多いと思います。そのためには、遺言はどうしても必要です。お世話になった方へ遺贈するという内容の遺言書を作成し、遺言執行者も指定しておくべきです。

 

また、身寄りがない場合は誰があなたの葬儀や埋葬などをするのかが問題となります。できれば信頼できる方あなたが亡くなった後の様々な手続きなど事前に依頼しておくことをおすすめします。また、遺言によってその方に財産を遺し、手続きの費用をその中から出してもらうことも可能です。