2012年5月アーカイブ

 公証役場とは、公証人が執務する事務所で全国約300ヶ所にあります。公証人は、裁判官、弁護士、検察官など法曹関係者の中から法務大臣が任命する公務員です。

 主な仕事は、公正証書や私署証書などの公的文書を作成することです。これらの書類は、極めて高い証明力を持つので、裁判所の判決がなくても強制執行できる場合もあります。

 

 一般には「尊厳死宣言書」も公証役場で作成することができます。その場合、主に次の二つの方法のいずれかを利用することになります。

 

1.私文書認証

 自ら用意した文書を公証人に確認してもらったうえで、その文書の内容があなたの意思に基づいて作成されたことを証明してもらう方法です。

 費用は、方式によって5,500円から11,000円程度と比較的安いのですが、原本を失くすと再発行はしてもらえません。尊厳死宣言書は、あなたが意思表示できなくなったときに力を発揮するものですので、大切に保管するとともに、いざというときはすぐに医療関係者などに届けられる体制が必要です。

 したがって、たった一つの原本であっても、ご自分の手許に置いておくことは得策ではありません。通常は、信頼できる方に預けることになりますが、こうした人が見つからない場合は、私文書認証の方法は適していないことが多くなります。

 

2.公正証書

 公証役場でもっとも利用される方法で、遺言や任意後見契約でも用いられます。公正証書はその文面も公証人が作成しますので、一般に私文書認証よりも証明力が高くなります。

 費用は、通常11,000円程度(別途、用紙代などが必要)です。原本は、公証役場に保管されますので安心ですし、謄本も費用を支払えば何通でも作成してくれます。

 ただし、文面の内容に関して、公証人と何度かやりとりをしなければなりませんので、それが面倒という方は行政書士などの専門家に依頼したほうがよいと思います。

 「尊厳死」について、日本における先駆的役割を果たしてきたのが一般社団法人日本尊厳死協会です。

 もとは延命治療や生命倫理について深く考える医師や法律関係者などの有志でつくられた団体だったのですが、いまや「尊厳死」や「延命治療」についての法制化を検討するときにも常に意見を求められるほど認知度の高い存在となりました。

 

 日本尊厳死協会では、独自の「尊厳死宣言書(リビング・ウィル)」の普及をすすめており、実際に多くの方が利用しています。

 手続きが簡単で、費用も安い(正会員・年額2千円から)のが最大の特徴です。宣言書の文言がすべて一律に固定されているので、ご本人が署名・捺印し、郵送するだけです。厳密にいえば、法律上の効力はないのですが、それでも9割の方がこの宣言書が活かされたという調査結果が出ています。

 

 一方で、宣言書の内容が固定されているため、「胃ろうも拒否したい」などの個別の希望には対応できません。また、ご家族の同意について記載することもできませんので、微妙な家族関係に配慮することはできません。

 

くわしくは・・・

一般社団法人 日本尊厳死協会

〒113-0033 東京都文京区本郷2-29-1-201

TEL 03-3818-6563  FAX 03-3818-6562

 「尊厳死宣言書」に法律上の要件はないと言われても、ある程度は目安がないとかけないと思います。

 

 そこで、公証役場や日本尊厳死協会で用いられているものを基準にした、ごく一般的なひな形をご紹介しますので、ご参考にしてください。

 

尊厳死宣言書

   
第1条 私○○○○は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に以下の要望を宣言します。
1 私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると担当医を含む○名以上の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。
2 しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしてもかまいません。
第2条 この宣言書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ております。

     妻    ○ ○ ○ ○   昭和  年 月 日生
     長男  ○ ○ ○ ○   平成  年 月 日生
     長女  ○ ○ ○ ○   平成  年 月 日生

私に前条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるよう御配慮ください。
第3条 私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これら方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。
第4条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。

 

 以上は、あくまで一般的なひな形ですので、あなたの置かれた状況に応じて内容は変わります。ご自分で書かれる場合でも、必ず専門家にご相談ください。

 「尊厳死宣言書」は、法律で規定された文書ではありません。したがって、決まった形式があるわけではありません。しかし、何の予備知識もなく自由に書いても、あなたの想いが伝わらずに、家族や医療関係者が適切な処置をしてくれなくなる恐れがあります。

 

 ですから、ご自分で書く場合でも、ある程度は法律の考え方に沿った書き方をしておく必要があります。その意味で、とても参考になるのが「遺言」です。「遺言」はご自分で書く場合にも民法でその要件が定められていますので、この要件にしたがって「尊厳死宣言書」も書けば、少なくとも法理論上はあなたの意思がそこにあったことが立証しやすいといえます。

 

 これらのことから、ご自分で「尊厳死宣言書」を書く場合には、以下のことには注意してください。

1.紙は何でもかまいませんが、鉛筆で書くことは避けてください。

2.ご面倒でもすべてご自分の自筆で書いてください。ワープロや代筆は避けてくださ

  い。もし、間違えたら訂正印を押すか、はじめから書き直してください。

3.日付は必ず入れてください。5月吉日など日付が特定できない表現はしないでくださ

  い。

4.氏名を必ず書いてください。また、一つの宣言書には一人だけの氏名を書いてくださ

  い。ご夫婦であっても、宣言書は別々にしてください。

5.印を押してください。認印でもOKですが、実印を押して印鑑証明書も一緒に綴じれば

  なお効果が増します。

 

 くり返しになりますが、尊厳死宣言書は法律上の決まりはないので、上記の要件を必ず満たさなければならないというものではありません。しかし、例えば印鑑証明書をつければ、それを見た医療関係者などは「これだけご本人は本気だったんだ・・」という印象を受けることになります。