2012年7月アーカイブ

「胃ろう」を拒否したい

 「胃ろう」とは、おなかの外側から胃に穴を開けて、チューブを通して栄養を送る方法です。

 もともと、事故や突発的な病気で一時的に食事が口から摂れなくなった患者さんのために開発されたものですが、嚥下機能の低下した高齢患者にも急速に使用されるようになりました。

 そのため、不本意・不必要な延命措置となっているのではないか、終末期の医療としてはふさわしくないのでないか、などの議論が起きています。

 

 嚥下機能が低下すると食べ物が気管にも入ってしまうため、誤嚥性肺炎のリスクがあります。このリスクを理由として「胃ろう」が選択される場合でも、「胃ろう」のケアや管理がうまくできなければ、胃に流し込まれた栄養が逆流し、誤嚥性肺炎を起こすということもあります。

 栄養過多のため、全身がむくんでしまう患者さんも多く、その姿を見て後悔する家族もいらっしゃいます。

 

 「胃ろう」はそれがなければ栄養を摂ることができない患者さんにとっては、唯一生命を守る手段となります。このような状況で「胃ろう」を外すことは、すなわち死を意味しますので、人工呼吸器を外すことと同じように極めて難しくなります。

 ところが、人工呼吸器などの措置と比べると、措置を始める時点の患者さんの状況はそれほど切迫したものではありません。そのため、安易に「胃ろう」を選択してしまうケースがあるのです。

 

 こうした状況からも、「ご本人が」「書面で」「胃ろう」についての意思表示をしておくことがとても大切です。他の延命措置と同様、ご家族に判断を背負わせることは極めて酷なことです。

 

 現時点で「胃ろう」の問題は、尊厳死宣言書にまつわる論点として比較的新しいため、日本尊厳死協会や公証役場でも一般向けの指針や様式などは出していません。

 

 しかし、高齢患者に「胃ろう」などを着けた場合に生ずる様々な問題は、医療・福祉関係者の大きな関心があり、議論となっている「尊厳死法案」においては「胃ろう」などの拒否も論点となっています。

 したがって、適切な尊厳死宣言書によって「胃ろう」をはじめとした経管栄養を拒否することは十分可能だと思われます。